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週刊少年ジャンプ連載中の尾田栄一郎先生のマンガ、『 ONE PIECE 』の2次小説Blogです。
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最初はね、そんなこと思ってなかった。
1人の時はそんなこと思ってなかったわよ。

むしろ、ウザかった。

可愛いだの、きれいだの、ステキだの、好きだ、だの、簡単に言う男なんて信用できるわけないじゃない?
私の見た目が可愛いとかきれいとかステキとか、そんなの言われなくたってわかってるもの。
彼に言われる前から、私はいろんな男達にそういうこと言われてきたから。
まあ、この一味に入ってからは言われてなかったけどね。彼が入ってくるまでは。

好きだ、って言う言葉も毎日言われりゃありがたみもなくなるってもんじゃない?
この言葉って、もっと重い言葉のはずだもの。もっと大事な言葉のはずだもの。

彼が言うのを聞いてたら、私が好きだって言うことが辛口海鮮パスタが好きだって言うのと同じイミに聞こえてきちゃう。

─── まあね、見た目はね。超ーう客観的に見てカッコいいと思うわよ。
サラサラで柔らかそうなキレイな金髪。スラリとした無駄のないスタイル。深く濃いブルーの瞳・・・。
今までタバコ吸う男なんて嫌いだったけど、彼の場合は何故か別に気にはならないし・・・、それに笑った時の顔なんてステキだと思う。・・・ちょっとだけね。

性格も・・・、まあ見てればわかるけど、彼は本当に優しい。
女性にだけだって口では言ってるけど、同じ男性にだって優しい。
何だかんだ言って、ウソップやチョッパーは結構彼に励まされたりしてる。

・・・って、客観的に見てよ!客観的に見ての話!!今まで褒めたのは全部客観的な話!!!
だから、だから何とも思ってなかった。

むしろ、ウザかったのよ。







その気持ちが少し変わってきたのは・・・、多分あの頃。
ビビが仲間に加わったくらいの頃。

可愛いだの、きれいだの、ステキだの言う言葉が、私だけにじゃなくなった。
ビビにも同じようにハートを飛ばす。

そうか、私じゃなくてもいいんだ。
きっと、彼にとっては女のコなら誰でもいいんだ。
ただのオンナ好きだったってことね。

─── そう思って気づいた。

あれ?私何言ってるの?
なんかこの言動、ジェラシーっぽくない?
ウザいんでしょ?彼の言葉なんて信用してないんでしょ?
オンナ好きだなんて、最初からそう思ってたじゃない。知ってたじゃない。
なのに、どうして今さらそう思うの?
どうして、ショックを受けてるの?

え!?・・・ショック?
私ショック受けてるの・・・!?
なんで?







もう1つ気になることがある。
彼は私のことを『ナミさん』と呼ぶ。
でも、ビビのことは『ビビちゃん』って呼ぶ。

どうなの?これ。

ずっと一緒にいる仲間なのに『さん付け』なんてすっごい他人行儀じゃない。
別に『ちゃん付け』で呼ばれたいわけじゃない。呼び捨てだってイマイチ。でもどちらも『さん付け』よりは壁を感じない。

彼が『ナミさん』って『さん付け』で呼ぶから、私も対抗して『くん付け』で呼んでみた。
他の仲間は呼び捨てなのに。
壁があるでしょ、って、気づかせる為に。
でも私のそんな気持ち、まるで彼はわかってないみたい。
彼は毎日毎日、私の名前を嬉々として『さん付け』で連呼する。
ナミさん、ナミさんと彼がそう呼ぶたびに、私の心にモヤがかかる。

混乱してきた。
彼は私にとってどうでもいい相手なんでしょ?
ただの、仲間でしょ?

なのに・・・、私はどうしたいの?







自分の気持ちをもてあましてた頃、傍にやってきたチョッパーが不意に私に言った。

「サンジは本当にナミの事が好きなんだな」

ニコニコしながら言うチョッパーに、私は怪訝な表情を向ける。

ぽかぽかと暖かい昼下がり。
私は長いすとパラソルを出してきて、甲板でのんびり本を読んでいたところだった。

「・・・あんなの、どんな女のコにも言ってることじゃない」

ついさっきも、飲み物を持ってきたついでに『好きだ』と言ってきた。
もう、口癖みたいなもんなんじゃない?
そばに居座りそうになるところを、何とか追い返したのよ。

だって、そばにいられたら平常心でいられなくなる。
イライラ、モヤモヤしてしょうがないのよ。

「可愛いとかステキとか言うのは他のコにも言ってるかもしれないけど、『好きだ』って言うのはナミにだけだよ」
「そんなことないわよ」
「そうだって。おれ、他は聞いたことないよ」

・・・そう言われて思い返してみた。

ナミさん、好きだァ~❤』

は、毎日何度となく聞くけど、

『ビビちゃん、好きだァ~❤』

は、聞いたことない、かも。
いや、でも、そんなの私がいるところで言ってないだけかもしれないし・・・。

でも、チョッパーの次の一言が私にとって重要な一言となった。

「サンジにとってナミは特別なんだな。だって『さん付け』だもんな」

「え?」
「ナミにとってもサンジは特別だろ?アイツのことだけ呼び捨てじゃないもんな」
「・・・・・」
「おれは恋愛ってあんまりわかんないけど・・・。なんか、いいよなぁ、楽しそうで」

そう言って、チョッパーはみかん畑の方に目を向ける。

「あ!!!ルフィそれ、食いモンじゃねーぞ!!!薬にする為に乾燥させてるのに、食うなよー!!!」

チョッパーはみかん畑の方へダッシュ。

「えー、これ普通にカエルの干物じゃねェのかよー・・・」

逃げるルフィの声が遠くで聞こえる。

私はチョッパーに言われたことを反芻していた。
彼にとって、私は特別?
だって『さん付け』されてんのよ?他人行儀な扱い受けてんのよ?
でも・・・、でも彼の私に対する態度は他人行儀なんかじゃない。

むしろ、真逆。

・・・特別、なのかな。ホントに?
チョッパーに言われた事が、私の心の中に広がっていく。
私は彼にとって特別なのかな?
私のことを『さん付け』する彼、毎日毎日飽きもせず『好きだ』と言い続ける彼・・・。

そうだ、もう1つあった。
彼は、女性陣を呼ぶ時必ず私を先に呼ぶの。

ナミすゎ~ん❤、ビビちゃァ~ん❤』って。

私を必ず先に呼ぶのは、私が特別だから?

・・・な訳ないじゃない。たまたまよ。
っていうか、特別だろうが何だろうが関係ないじゃない。
私、彼のことなんとも思ってないんでしょ?
ウザいって思ってたんじゃなかった?

でも。

彼にとって私は特別なのかも、と少し思うだけでちょっと気持ちがほころんでくる。
モヤが晴れる気がする。
残念だけど、それは事実。





その気持ちが『恋』なんだということ。
そう自覚すること、納得するのは、意地っ張りな性格も手伝ってもう少し後のこと。



もう少し。
もう少し・・・。




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