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週刊少年ジャンプ連載中の尾田栄一郎先生のマンガ、『 ONE PIECE 』の2次小説Blogです。
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甲板に出ると冷たい空気が肌を刺す。
つい先日まで天気はあまり良くなかったのが、ここ2.3日はなんとか青空を拝めている。
それまで季節外れかのように天候が定まっていなく暑かったり寒かったりしたのが、雨が上がってからは少し気温を下げた状態で安定していた。

秋島が近いのね、と言ったのはナミだったかロビンだったか。

オレは冷たい潮風を思いっきり肺に吸い込んだ。

今日は11月11日。
オレの、誕生日。

オレは一人甲板の手すりにもたれかかって、穏やかな波をじっと見つめていた。
周りでは仲間たちが総出で大騒ぎしながらなにやら準備に取り掛かっている。
今日の夜は、オレの誕生日パーティが催される。
これは、仲間が増え長い時間を過ごす中で自然と出来上がった約束事だ。

誕生日は盛大に祝うこと。

まあ、何かっちゃしょっちゅう宴をやってるオレ達だけど、誕生日だけは気合の入り方が違う。
当日は朝から準備・・・、それまでもプレゼントを買ったり何やかんや準備をする。
その日の夜のメインイベントの為に、みんなが一丸となって行動するって訳だ。
基本的にはみんなで何かをやり遂げる、ってのが好きな連中なので、みんな夢中で準備をしている。終わった時の達成感たるや、相当なもんだ。
普段は好きなことしか極力やらねえオレでも、これに関しては別だ。

ただ。

ただ、当の祝ってもらう立場の者は、実際は微妙な立場にある。
準備に参加できないのだ。

お祝いされる者が自分の誕生日会を準備してどうすんだ、と言ったのはルフィだったかアホコックだったか。

祝ってもらえるのはもちろん嬉しい。
でも、このどうしようもない疎外感は否めない。

ヒマだから芝生の甲板で昼寝をしようかとマストにもたれて目を閉じていたら、ナミのヤローに邪魔だと蹴り飛ばされた。
それならばと釣り糸を垂れていると、今日の晩飯はオレ達が用意するんだからと、ルフィとウソップに釣竿を取り上げられた。
そして今は。

「ダメですよ、ゾロさん。これから私、ちょっとここで今夜のためのリハーサルをするので、席を外してもらえませんか」

ここなら邪魔にならないだろうと移動した甲板の端をも、バイオリンをかまえたブルックに追い出された。

なんなんだ。

・・・・・まあ、オレが逆の立場なら同じようにするかもな。

しょうがなく、オレは苦笑いしながら足をジムの方へ向けた。
さすがにあそこだけは邪魔にはならねえだろ。







ひとしきり身体を動かした後、オレは汗を拭きながら窓際に並ぶベンチに腰を下ろした。
時刻は昼を少し回ったあたり。
外にいる時は少々肌寒かったが、ジムの中は熱がこもって少し暑いくらいだった。
自分が運動した熱気もあるだろうが、元々ここは展望台も兼ねるくらい高い位置にある。
日当たりもいいので、普段から少々寒い日でも結構ここだけはいい感じにぽかぽかと暖かい。
オレは窓から下を見下ろした。
チョッパーが箱を抱えてアクアリウムの方へ走るのが見える。
多分、あの箱には部屋を飾りつけるものが色々と入ってるのだろう。
キッチンの屋根から延びる煙突からは薄い煙がたなびいている。
アホコックが今夜の為のメニューをナミと色々と考えてるのは知っていた。
まあ、アイツの取柄は料理だけだからな。
他の奴らも今日の夜の為に、それは楽しそうに準備してるんだろう。
わかるよ、だってオレも他の奴らの誕生日のときは同じように楽しいからな。

今日の主役は自分で。だからこそ準備の仲間には入れなくて。
少し淋しくはあるけれど、でも、自分の為にみんなが動いてくれている。

オレは自然と微笑みながらその様子を見つめていた。
そしてその内に暖かさも手伝ってか、知らない間に眠ってしまった。







─── オレは走っていた。
空には大きな満月。辺りは見渡す限り田んぼが広がる。
そこは、今はもう帰る事ができないオレの故郷。
オレはその畦道をひたすら走っていた。
両手には竹刀を握り締めたまま。
走っているのは、ガキの頃のオレだ。

「─── ゾロ!遅いよ!」

たどり着いた先に待っていたのは、・・・くいなだ。
オレより年上で、どうしたって敵わなかったライバル。
いつも決闘に使っていた村はずれの原っぱに静かにたたずむ彼女は、月の光を受け、子供心にも見惚れるくらい綺麗だった。

「怖くなって逃げたのかと思ったよ」

そう言って彼女はにっと笑う。

「うるせぇ!」

オレは息を切らせて竹刀を構えた。
大声を上げないと、自分の鼓動に押しつぶされそうだった。

「今日こそはぶちのめしてやる!」
「そう言ってやれた例がないじゃない」
「うるせぇ!今日のオレは違うんだ!」

そう叫んで、オレはくいなに飛び掛っていった。
打ち合うこと数合。
いつもならこれくらいで竹刀を飛ばされて終わる。でも今日は違った。
くいなから繰り出される厳しい攻撃に、オレはいつもより耐えていた。
いつもは見切れない太刀筋が、今日はわかる。
オレは気持ちが昂ぶっていた。

今日こそは、くいなに勝てる。

オレの竹刀が彼女の竹刀をとらえた。
巻き込み、空へ飛ばす。・・・ハズだった。
巻き込んだはずの竹刀をさらに返され、飛ばされたのはオレの竹刀だった。

「は!」

それは一瞬だった。
彼女の竹刀がオレの喉元で止まる。
オレの腕から飛んだ竹刀が地面に転がる音が、やけに遠くに聞こえた。

「・・・勝負あり、ね」

息がかかるくらいオレに顔を近づけたくいなが、またしてもにっと笑った。

「1999戦1999勝0敗」
「ち・・・っくしょ・・・」

竹刀を下ろしてオレから離れていくくいなの背中に、オレは吐き捨てた。
彼女が離れた勢いで、オレは尻餅をつく。
今日こそは、今日こそは勝てると思ったのに。

だって今日は・・・。

くいなは傍らの石段に腰を下ろして、ふうと息を吐いた。

「・・・強くなったね、ゾロ」
「あ・・・?!」

にっこりと柔らかく笑う彼女をオレは思いっきり睨みつけた。

「・・・何だよ、でも勝ってんのはお前じゃねェか。・・・つまりは自分が強いって言いてェのかよ」

オレは指に触れた石ころを腹立ち紛れに放り投げた。
くいなはくすっと笑った。

「違うよ、本気で強くなったと思ったの。今日は・・・、本気でヤバイと思った」
「・・・・・」

オレは顔をくいなに向けた。
今のくいなの声は、同情とかそんなんじゃない。
多分、本気で言ってくれてる。

くいなが言葉を続けた。

「やっぱり今日は違うのかな?」
「え?」
「1つ成長したんだもんね」
「・・・・・」

「今日、誕生日でしょう?」

くいなは立ち上がると、オレの方にゆっくりと近づいてきた。
オレの手をとり、立ち上がらせる。

そして、ふわっとオレを抱きしめた。

「誕生日おめでとう、ゾロ」

汗の中に甘いにおいが混じる。
オレは何もできずにただ、立ちすくんでいた。
抱きしめられた腕が心地よく、離れる事も出来ない。
彼女のものなのか、オレのものなのか、響く鼓動だけがやけに耳についた。

「・・・誕生日だから、手加減したのか?」

オレはようやく声を出した。
違う、こういうことが言いたいんじゃないんだ。

言いたいことは・・・。

「違うよ、断じて違う」

くいながゆっくりと体を離した。
オレは何故かそれを淋しいと感じていた。

「ゾロに手加減なんかもう出来ないよ。そんな余裕無い。それ以前に・・・そんな失礼な事出来ない」

そう言った彼女の声が悲しげで、オレはすぐに自分の失言を詫びた。悪かった、と。
そして、オレは深呼吸を一つすると、言いたかったことを告げた。

「ありがとう」
「・・・おめでとう。本当に」

くいなはもう一度そう言って、にっこりと笑った。







─── そこでオレは眼を覚ました。
あたりはだいぶ薄暗くなっている。時計を見ると数時間は経っている様だった。
オレはベンチに倒れこむように横たわっていた。
汗が冷え、少し肌寒い。
オレはゆっくりと起き上がると、傍らに落ちていたタオルを肩に掛け頭をがしがしと掻いた。
そして今見ていた夢を思い出した。
くいなの夢。

「何で、今頃」

オレは思わず呟いた。

彼女が亡くなった頃はよく夢に出てきていたが、それも気がつけばなくなっていた。
だからと言って、彼女のことを忘れたわけではない。
久しぶりに見た彼女の夢。
オレは今はもう歳を取る事もない彼女に想いを馳せた。

何度対戦しても一度も勝てなかった彼女。
オレが勝てないのは彼女だけで、そんな目の上のたんこぶが腹ただしくてしょうがなかったっけ。
何をしても、どうしたっても勝てないのはムカついたけど、それでも彼女と対戦するのは楽しかった。
楽しそうに、オレに向かってくる彼女が好きだった。

彼女が亡くなる前日、最後の決闘の時に交わした約束。
2人の内のどちらかが世界一の剣豪になること。
彼女がいなくなった世界で、ただそれだけが自分にとって生きる理由だった。
1人村を飛び出し、向かってくる者手当たり次第になぎ倒していた。
“海賊狩り”と渾名をつけられ、恐れられた。無法者からはもちろん、一般の善良な市民からも。
自分の進んでいる道が間違っていたとは思っていない。
ただ、このままでいいのか、という思いは常につきまとっていた。
このまま、ただただひたすら修羅の道を進むのか。その先にあるのは自分が求めていたものなのだろうか。
彼女がいれば。もしオレの傍に彼女がいたなら何か変わっていたのだろうかと。

1人だったら多分、理想と現実のハザマでがんじがらめになっていただろう。
もういない、くいなの影に怯えていたかもしれない。
不要なプレッシャーに押しつぶされていたかもしれない。

でもオレは1人じゃない。
護り、護られる仲間がいる。

もちろん、世界一の剣豪になること、その夢は今もオレの中で輝き続けている。
でもその意味は、昔とは少し変わった。
ルフィの奴を海賊王にする為に、オレは世界一の剣豪になる。

そこまで考えて、オレはふっと苦笑した。

夢は変わらないけれど、昔とは少し意味合いが変わっている。
今のオレをお前が見たら、お前はオレが変わったと思うのかな?
それとも変わってないと思うか。

今はもう聞くことが出来ない答え。
まあ、でもいいさ。
変わってようが変わってまいが、オレはオレだ。
結果は決して悪かねェ。







─── 何言ってんだか、と1人ごちてオレは立ちがった。
むんっと、凝り固まった体を軽くストレッチしてほぐす。
そこへ、チョッパーとウソップがジムの入り口から顔を出した。

「やっぱりここだったのかー」
「準備できたぜ。来いよ、主役」

「おう」

オレはジムを出る寸前、窓の外を見上げた。
空に浮かぶのは綺麗な満月。

───  1つ成長したんだもんね。
───  誕生日おめでとう、ゾロ。

くいなの声が耳を掠めたのは気のせいか。
でも。

─── ありがとよ。

オレは心の中でつぶやくと、ジムの扉を後ろ手にそっと閉めた。











あとがきです。
だーいぶ遅くなっちゃいましたが、ゾロのお誕生日記念ssでございます。
途中ぐだぐだになっちゃってどうしようかと思いましたが、ぐだぐだのまま載せました。>をい
いいんだ。
どっちにしたってどの文もぐだぐだだもん。>ヒラキナオリ

そうそう、タイトルの“Happy Birthday”ですが。
B’zの曲のタイトルにほんとにあったんです。
これが使わないでいられるかってんだw
見つけたときはテンション上がりましたねー。
これでタイトル考えなくて済む>ん?



とりあえず愛だけはこもってますわよ♥

ゾロ、お誕生日おめでとう☆ オメデト♪(゚∀゚ノノ"☆(゚д゚ノノ"☆(゚∀゚ノノ"☆チャチャチャ

拍手[11回]

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