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週刊少年ジャンプ連載中の尾田栄一郎先生のマンガ、『 ONE PIECE 』の2次小説Blogです。
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サウザンド・サニー号が空を飛んでいる。
どんどん小さくなる海軍の軍艦を見つめ、私はあらためて、この船に乗っている幸せをかみしめていた。
つい5日前には、自分がこんなに幸せを感じているなんて思いもしなかった。

─── 5日前、私は絶望の淵にいた。
仲間と訪れた街、ウォーター・セブンで私はCP9に捕らえられた。
彼らが私につきつけた条件は、市長暗殺の罪を麦わらの一味に着せること。
そしてその後CP9に付き従うこと。
逆に私が彼らに提示した条件は、私を除く麦わらの一味6人全員が無事にこの島を出航すること・・・。

死ぬ、つもりだった。

もう生きることなんて諦めていた。
彼らさえ無事なら、何を犠牲にしたってそれで良かった。
でも、当の彼らがそうはさせてくれなかった。

麦わらの一味6人全員が。
そして、彼が。

命を掛けて私を不落のエニエス・ロビーから、世界政府から連れ戻してくれた。
だから今、私はここにいる。

一味のみんなと、そして、彼と。







海軍の追っ手を無事振り切りW7を出向した私達は、その夜、宴を開くことになった。
新しく仲間になった船大工のフランキー、一味に戻ってきたウソップ、そして私を祝して。

サニー号のダイニングではいつも通りルフィの乾杯から始まり、テーブルに並べられたサンジの腕によりをかけた料理が、瞬く間にクルーの胃袋に収められていく。
もちろん、3分の1以上はルフィのおなかの中なのだけど。
歌い、踊り、笑い、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

─── 気がつけば、ルフィ・ウソップ・チョッパーはすっかり酔いつぶれて、床に転がっていた。
ルフィは『食いつぶれて』と言った方が正解なのかもしれない。
ゾロは壁にもたれながら、眠そうに大きなあくびを一つしている。
カウンターではサンジがナミににこやかに話しかけながら、湯気の立つティーカップを渡している。
受け取ったナミは、表情を変えずに紅茶を一口。
それを見るサンジの顔は蕩けそうだ。

そして彼はティーセットを手に私のところにもやってくる。

「─── どうぞ、ロビンちゃん。オレンジジティーだよ」

サンジが私ににっこりと笑いかける。

「いえ、今は結構よ。ありがとう」

私は苦笑しながら丁重に断った。
だって横で、ナミがなんだか複雑な顔してるんだもの。

ふふっ、可愛いわね。

「そう?じゃ、欲しくなったらいつでもどうぞ。・・・てか、おい!おめーら、寝るなら部屋戻れよ!」

キッチンのカウンターから出てきたサンジは、傍に転がるウソップを蹴りつけた。
眠りこけているウソップは、なんだかもごもご言いながら再び夢の中へ。

「邪魔だなこいつら・・・。おい!マリモ!おめーもだ!寝るんならこいつらまとめて部屋に持って行け!」
「・・・ああ!?」

半分眠りに入っていたのだろう。良い気持ちのところを起こされたゾロは、閉じていた目を片目だけ開いてサンジをにらみつけた。

「・・・なんでオレがてめェの言うことを聞かなきゃなんねェんだ」
「邪魔なんだよ、そんなところで寝こけられるとよ。クソマリモ」
「何だとコラ。ぶった斬んぞ」
「オロすぞコラ」

「はい、そこまで!」

おでこを付き合せるくらいににらみ合っていた2人を、ナミが後ろから同時にはたく。

「痛ってェ❤」
「何すんだコラ」

2人が同時に振り返る。表情は真逆だったけど。
そんな2人に、ナミは顔をしかめながら言った。

「何でもいいから、連れて帰っちゃってよ。片付けられないじゃない!」
「え!ナミさん片付けてくれるの?」
「もちろんサンジくんがよ」
「・・・そうだよね」

サンジ、少しだけ落胆。
ゾロは少しナミのことを睨んでいたけど、ため息をついて言った。

「・・・オレ一人でこれだけ担げってか」

・・・彼もナミには弱いのね。

私は思わず微笑んだ。
ナミが少し考えて言う。

「・・・そうよね。・・・サンジくん!」
「はぁい❤」
「ゾロと一緒に部屋まで運んで」
「りょうかーい❤」

サンジは目をハートマークにして答える。
その横で、ゾロは苦虫を噛み潰した顔で、ウソップの長い鼻を掴んで引きずりながら部屋の外へ向かった。

残されたメンツを見て、サンジは少し焦る。

「お!おい、待てよクソマリモ!オレ1人でこのゴムとたぬき連れてけってか!?」
「さっさと連れて来い」

ゾロは振り向きもしない。

「せめてたぬきも連れて行きやがれ!」
「うるせェ、さっさと来い!」
「ああ!?何だとこのクソ・・・」

「もう!!!さっさと行けーっ!!!」

ナミの怒鳴り声に、2人は慌てて2人と1匹を引きずって部屋を後にした。
おなかの膨れた船長を入り口から出すのに少し苦労していたみたいだけど。







「・・・何よ、ロビン」

私とナミの2人だけになったダイニング。
眉間にしわを寄せながら、ナミが私に言った。

「笑いすぎよ」
「え?」

そんなに笑ってたかしら?
まあ、にっこりしてたのには違いないけれど。

「笑いすぎ・・・ね」

私はふと昔を思い出した。

小さい頃。
両親がいなく叔父の家に居候してた時の頃。
あの頃、うっかり悪魔の実を口にしてしまったせいで、よく妖怪扱いされたっけ。
居候していた家でも歓迎とは程遠く、図書館にいる時以外は楽しいなんてこと思ったことはなかった。
笑う事もなかなか出来なかった。

でもそんな私に笑うことを教えてくれたのは、オハラに流れ着いた巨人ハグワール・D・サウロ。

サウロは私に言った。


『おめェちびのくせに色々苦しそうだで、笑ったらええでよ!苦しい時は笑ったらええ!』


そして私に笑いかけてくれた。
その笑い方がおかしくて、私も思わず一緒に笑ったっけ。
彼はこうも言ってくれた。


『よく聞け、ロビン・・・。今は一人だけどもよ、いつか必ず”仲間”に会えるでよ!海は広いんだで・・・いつか必ず!!お前を守ってくれる”仲間”が現れる!!!この世に生まれて一人ぼっちなんてことは絶対にないんだで!!!』


事ある毎に心によみがえるその言葉。そんな言葉を信じてなかった今までの私は、その度にそれを打ち消していた。
でも、今は心から信じられる。
今の私には、私を守ってくれる仲間がいる。守りたい仲間がいる。

サウロが生きていたら、今の私のことをきっと喜んでくれるわね。

「─── ロビン?」

私ははっと気がついた。
どうやら自分の心の中に籠もってたみたい。

「どうしたの?」

ナミが不思議そうな顔をする。

「ごめんなさい、ちょっと考え事・・・」

私は慌てて取り繕うように言った。

「そう・・・」

ナミがオレンジティーを一口飲む。そしてダイニングの入り口の方に目をやる。
その様子を見て、私は思わず微笑んだ。

「・・・心配しなくても、もうすぐ戻ってくるわよ」
「え?」
「サンジ、でしょ?」
「えっ・・・やっ・・・、べ、別にサンジくんなんて待ってないわよ!」

真っ赤になって否定する。
ふふ、ホント可愛い。

「邪魔しないように私も戻るわ。そうだ・・・」

私は冷蔵庫に向かう。
ようやく備え付けられた暗証番号付きの大きな冷蔵庫。サンジが大喜びしてたっけ。
これでもう、夜中に食料泥棒と戦わなくて済む、ってね。
サンジとナミ、そして私しか知らない暗証番号を押し、冷蔵庫を開く。
お目当ての物を3本取ると、私はゆっくりと冷蔵庫を閉めた。

「あれ?コーラ?・・・飲むの?」

私が手にしたものを見て、ナミが意外そうに言う。

「いえ・・・、差し入れ」

私は落とさないように3本のコーラを抱え直すと、ダイニングの入り口へ向かう。
出て行く直前、振り向くとナミがものすごく驚いた顔をしていた。

私は噴出しそうになるのをこらえて言う。

「そうだ・・・、ナミ?」
「は、はい!?」
「私は今日は部屋に戻らない方がいいのかしら?」

答えを待たず、私はダイニングを後にした。
きっと、今頃顔を真っ赤にしてじたばたしてるに違いない。

彼と2人の時の彼女はどんな感じなのかしら。
今度、耳を咲かせてみようかな。

私は思わずくすくす笑った。



甲板に出る直前で、急いで戻ってきたらしいサンジとすれ違う。

「あれ?コーラ?・・・飲むの?」

ナミと同じセリフ。
私は微笑んだまま、彼を後にした。







コーラを抱えて甲板に出た。
出航初日だから色々チェックしたいんだと、見張りを買って出た彼に逢う為に。
見張り台へ向かおうとして、ふと舵輪の方に人の気配を感じた。

あっちかもしれない。
そうね、色々チェックするなら都合がいいのかも。

私は船の前方に歩いて行く。
空に浮かぶ大きな満月。月明かりで辺りは充分に明るかった。
舵輪のすぐ傍のベンチに座っている人影が見えた。

フランキーが、そこにいる。

「─── お疲れさま」

私は彼をおどかさないように、静かに声をかけた。
それでも誰かが来るとは思わなかったんだろう、彼はびくっと身体をこわばらせる。

「─── アウ、誰かと思えば、ニコ・ロビンじゃねェかよォ・・・」
「あらごめんなさい、おどかしちゃったかしら」

私はくすっと笑う。

「まあ、こんなとこには今時分、誰も来ねェと思ってたからなァ・・・」

フランキーが息をついた。

「・・・で?どうした。宴は終わったのか?オレが出て来る時にはまだ続いてたろ」
「ええ、ルフィたちがつぶれちゃって終了」
「そうか・・・。で、お前は?」
「あなたに差し入れ」

私は抱えていたコーラをフランキーに渡す。

「おう!ありがとよ!」

フランキーは嬉しそうに早速コーラの栓を1本開ける。

「・・・隣、いいかしら?」
「え?あ、ああ・・・」

ベンチのど真ん中にどっかりと座っていた彼は、身体をずらして私の座るスペースを作ってくれる。
その隙間に、私は座り込んだ。
フランキーは身体が大きいから、私が座るとベンチはもう目いっぱいだった。

しばらく、2人で海を見ていた。何も言わないまま。
時折、フランキーがコーラを飲む音が聞こえるだけ。

どれくらい時間が経っただろう。

「・・・どうしたよ」
「・・・・・」
「何かオレに用事あるんだろ?」
「・・・・・」
「相談事なら何でも聞くぜ?今週のオレはスーパー頼りになるからな」

フランキーはにやっと笑う
私も思わずくすっと笑った。

そしてそのまま・・・そっと彼にキスをする。

「おい!な・・・」

フランキーは慌てて私を剥がした。
目を丸くして驚いている。

私は静かに言った。

「お礼を・・・しにきたの」
「礼?何の!?」
「あなたのお陰で私は今、生きていられるから」
「何・・・言ってんだ。お前が今ここにいるのは麦わらたちのお陰だろう。オレじゃねェよ」
「もちろん、ルフィたちのお陰。でも、何よりあなたが私に言ってくれた言葉のお陰で、こんな私でも生きてていいって思い始めるようになったの。きっかけはあなたなのよ」
「オレがお前に言った言葉?」
「そうよ。覚えてない?」
「・・・・・?」
「海列車で護送されている時に言ってくれた、あの言葉」


『傷つけるのはお前じゃねェだろ?政府の人間もお前の存在を罪というが、どんな凶器を抱えてようともそこにいるだけで罪になるなんてことはねェ!存在することは罪にならねェ!!』


「・・・あ、ああ・・、あれか。でも・・・」
「今まで自分の存在を否定される言葉しか聞いてこなかった。あの言葉で、前を向く気持ちがわいてきたのよ・・・。どれだけ感謝してもしきれない・・・」

そして私は彼の手を取って、自分の胸に押し当てた。

「おい・・・!」

フランキーは焦って手を離そうとする。でも私は離さなかった。

「どれだけ感謝してもしきれない・・・、だから、抱いて欲しいの」
「・・・・・!」
「私には何もないの。あげられるものはこの身体くらい」
「・・・・・」
「だから・・・、これが、私のあなたへのお礼」

私はもう一度、フランキーにキスをする。さっきよりも深く。
薄く開いた彼の唇の間へ舌を滑り込ませる。最初は戸惑っていた彼の舌も、ゆっくりと私の舌に絡み始める。
私の胸で立ち止まっていた彼の手も、ゆっくりと動き始めた。
壊れものを扱うように、丁寧に揉みしだく。
豪快な彼がこんな触り方をするとは、意外だった。

でも、しばらくして彼は唇を私から離した。
手も、胸から離す。
そして私の両肩を掴んで息を大きく一つつくと、声を少し荒げて言った。

「お前は・・・、こんな、礼の返し方を今までやってきたのかよ・・・」
「・・・・・」
「こんな・・・、もう少し自分を大事にしろよ!」
「・・・・・」
「嫁入り前なんだぞ!自分から傷モノにしてどうすんだ!!!」

私は思わず吹き出した。

「な・・・、何がおかしい!!!」

申し訳ないとは思ったけど、笑いはなかなか止まらない。
それでも何とか抑えると、目じりの涙を拭きながら言った。

「嫁入り前だなんて・・・、そんな事も初めて言われたわ」
「だってそうじゃねェかよ」
「そうだけど・・・、今まで生きてきた世界を思うと、そんなの別世界の言葉だわ」
「・・・・・」
「身体なんて、道具だもの。男を悦ばせる道具」
「・・・・・」
「こんなもので悦ぶなら安いものだわ」

フランキーの表情がどんどん険しいものに変わる。

「・・・安いもの、だったわ」
「・・・!?」
「今までは・・・」

声が潤む。
自分でも驚いた。

私、泣いている。

今までの私は、使える物はみんな使ってきた。
頭脳も、培ってきた知恵も、身体も。
自分の身を守る為に、いろんな男に身体を開いてきた。
それが、普通だと思ってきた。
罪の意識なんて持たなかった。

じゃないと、生きていけない。夢の為に、前に進めない。

自分の夢の為に、何だってしてきた。
夢の為の、つもりだった。

でも・・・。

でも、喜んでやっていた訳じゃない。
ホントは。
ホントは・・・。

フランキーは静かに言った。

「もう、こんなことする必要ねェよ。その身体はホントに好きな奴の為に取っとけ」
「・・・・・」
「安売りすんな。こんな極上の女、もったいねェだろ」
「いいの・・・?」

私の目から、涙がとめどなくこぼれていく。

「もう、普通の女性のように、生きていっていいのかしら・・・」
「当たり前だろ、もういろんな組織にもぐりこんだり、裏でコソコソする必要ねェんだ。この一味で、お前らしく生きるんだろ?」

彼はためらいの橋の上で海楼石の錠を外してくれた。
そして今度は、彼はその言葉で私の心の鍵を外してくれる。

硬く閉じられた心の鍵を。

「・・・ありがとう」

私はフランキーの胸に倒れこんだ。薄い皮膚の向こうに硬い鉄の身体を感じる。
でも、暖かい。
私はゆっくり目を閉じた。

「お、おい、ニコ・ロビン?」

そう言いながら、フランキーはおずおずと私を抱きしめてくれた。

「おい・・・?・・・寝てんのか?」

なんだかそれがほっとして、心地よくて・・・、私はそのまま眠りに落ちていく。

「・・・ロビン・・・」

フランキーが私を呼ぶ声を、私は遠くの方で聞いていた。







ふと、私は目を覚ました。

固い感触。
私はベンチに寝かされているみたいだ。
私の身体の上には、フランキーのアロハシャツがかけられている。当のフランキーは、ベンチの下であぐらをかいて座り込んでいた。背中を向けているから、起きているのか寝ているのかは定かではない。

私はベンチに寝かされている理由を考えた。
彼は一度は私の部屋に連れて行こうとしたに違いない。
それでもここに寝かされてるということは・・・。

・・・きっと、部屋はナミとサンジが使っているのね。

気づかれないようにくすっと笑い、私は再び目を閉じた。





この胸の気持ちがもう少し大きくなったら、彼は私のことを受け入れてくれるかしら。
また、嫁入り前が、とか言われちゃうかしらね。
受け入れてくれるといいんだけれど・・・。






◇コチラから管理人のコメント

ロビンとフランキーのお話です。
ほんのりR風味ですが、ギリセーフということで勘弁して下さいな。

タイトルの“OFF THE LOCK”の意味は『鍵を外せ』ということで・・・。
みんなのおかげで麦わらの一味に戻ってはこれたけども、長年の癖みたいなものってそうそう簡単には抜けないと思うんですね。
きっとロビンは簡単に口に出せないような辛い経験をたくさんしてきたのではないのかと。
忘れてしまうことは難しいかもしれませんけど、吹っ切るきっかけになったお話を書いてみたくて書いてみました。

大丈夫かな?ちゃんと書けてるかな?どきどきどき。

フランキーの「嫁入り前の~」のセリフは好きです。
このセリフは、秘密基地に乗り込んできたルッチさん達率いるCP9にスクエアシスターズがやられた時に出て来たもので、これ聞いた(読んだ)瞬間、
「アニキっぽい!!!」
と思ったものです。
すっごい使いたかったんです。
自然に使えて良かった。

二人の今後を書くのが楽しみです。
ちなみに、ロビンの心の鍵が外れましたが、フランキーの心の鍵も外れたんですよー。


拍手[6回]

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